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にこにこと話している自分に安心した。
しばらく居たからか、掃除したからなのか、少しずつこの空間に慣れだした。
だが、やっぱり彼女、今はこんなふうにいつも通り会話しているものの、掃除中はろくに物も運べず、ふらふらしていた。
流石にあの様子じゃ明日にでも倒れてしまうだろう。
今日は結局、彼女の様子がおかしいという事が明確になっただけで、何故様子がおかしいのかはさっぱりわからなかった。
とすれば、今日の自宅訪問には全く収穫がなかったということになる。
だったらせめて、彼女が少しでも休めたらいいと思った。
「それより、喉渇かないか?」
『あ、お茶ない。』
「じゃあ、水は?」
『水道水なら』
「何にもないんだね」
『まぁね』
「水道水でいいよ、キッチン勝手に借りてもいい?」
『いいけど、海がいれてきてくれるの?』
「うん。君、ふらふらじゃないか。そこらへんでゆっくりしときなよ」
『…ありがとう』
よし、ちょっと強引だけど彼女の水の中に僕が普段飲んでいる睡眠薬を砕いて溶かす。
なんだか、悪いことしてる気分…。
いやいや、寝かせるためには医学の力だって必要なわけで…、と頭の中で謎に言い訳をしながら薬が溶けるようにぐるぐるとかき混ぜる。
たまたま自分用の睡眠薬がポケットの中に入っているとは都合が良すぎる。
まぁ、こういうこともあるだろう。ということですませておきたい。
「はい。」
「ありがとう」
僕が水の入ったコップを渡すと彼女は嬉しそうに笑って受け取った。
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