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第10話 ヒョウガとテンマ、火葬場の戦い
「へッ! やっと面白くなってきたな!」
ヒョウガはクナイを両手に構え、笑みを浮かべた。
「これで周囲を気にせず戦えるな」
テンマは剣を振り回し、地面に突き刺した。
人々を避難させた広場とはいえ、街の一部で戦うのは、やりにくかった。
「喜ぶのは早い……。私たちにも戦いやすいかもしれないが、妖怪に取ってはさらに戦いやすいだろう。こんなに妖気を放っているからな」
リンエンは狩衣の袂からお札を出し、ヒョウガたちに向かって投げだした。
札はヒョウガのクナイ、テンマの大剣に貼りついた。
「おい! 祈祷師! なに、ボクのクナイに余計なもん付けてんだよ!」
「この場所では、何が起きるかわからん! 一度だけだが我が東家の札が守ってくれる!」
「お守り……のようなものか」
テンマも自分の剣に札を貼られ、内心、怒りがあった。
「頼光! 貴様も刀を出せ! 札を貼る!」
「わーん! よろしくお願いしますー!」
頼光は抱きかかえていた刀を前に出した。
「おい! 刀を鞘から出せ! 刃に貼らねば意味がないんだ!」
「だって刃物怖いんだもん!」
「くッ! 何が破魔之天王の生まれ変わりだ! その刀は飾りだと言うのか!」
「うぐぐ……」
頼光が刀を鞘から抜こうとした瞬間、地面が揺れ出した。
前方の火葬場の屋内から凄まじい形相で死装束を着た骸骨の群れが向かってきた。
「うわー! 来たー!」
頼光は刀を鞘から出す前にまた抱きかかえた。
「おい! 鞘から出せ! 札が貼れん!」
「馬鹿はほっといた方がいいぜ。祈祷師。もう、そんな余裕は無いようだ!」
ヒョウガは言葉を言い終わると同時に逆手に持ったクナイで骸骨たちの頭部を破壊していく。
「おー! 札のおかげかいつもより切れ味が良い気がするぜ!」
ヒョウガはバク転、バク宙と飛び跳ねまわりながら骸骨を切り刻んでいく。
アクロバティックな戦闘スタイルにテンマは関心を示していた。
「余裕のようだな」
「これがボクの通常スタイルだぜ」
「クナイと手裏剣を投げるだけが取り柄だと思っていた」
「いきなり、あんな大技を見られてラッキーだったなお前ら!」
「面白い……こちらも見てもらおうか」
向かってくる骸骨をテンマは大剣で戦っているとは思えないような、剣裁きを見せた。
剣を軽々と扱い、右手、左手と交互に持ち換え、逆手、上段、下段、突きとあらゆる剣の技を繰り出した。
「ほう……たしかに斬れ味がいつもと違うな」
「やるじゃねぇか、デカぶつ」
「伊達に妖怪討伐に選ばれたわけではないからな」
ヒョウガとテンマは戦いの中でお互いを認めあった。
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