第1話 妖怪討伐隊

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第1話 妖怪討伐隊

「ナウマク サンマ ダアバア サラダン センダン ソワタヤ ウンタラ カンマン」  屋敷の縁側で1人真言を唱えている青年がいた。  名は『(あずま) 凛縁(リンエン)』。  代々祈祷師の家系の中でも百年に一度の天才と言われる才能を持っている。  普段から和服を愛用し、長い黒髪に切れ長に黒い瞳を持つ青年。  幼少の頃からいままで修行を一度も怠ったことはない。 「リンエン。話がある」   リンエンの父・カンエンがやってきた。  リンエンは振り向かずにカンエンの言葉に返答した。 「現れたのでしょう。妖怪たちが」 「さすがだな。もう気が付いていたとはな」 「初めて感じましたが、これが妖気ですか?」 「ああ。私も初めてだが、息苦しいものだ」  リンエンは最後の真言を唱え終わると立ち上がり、空を見上げた。 「今晩、行ってきます」 「今晩だと? まだ早すぎる!」 「この日のために私たち一族は修行を積んできました。父上は門下生、他の親族にご連絡をお願いします」 「お前、1人ではないことを肝に銘じて置け」 「父上、この近くにいるのは一匹のようです。私、1人で倒せなければ、これからの戦いは厳しいでしょう」 「しかし、お前……!」 「父上は、前回の失敗を心配しておられるようですが、あれは私の油断でした。今回は大丈夫です!」  リンエンは現代にはそぐわない、都の貴人のような出で立ちをした整った顔立ちの男だった。頭には烏帽子(えぼし)をいただき、腕には太刀。純白の狩衣(かりぎぬ)の背には五縫星(ごぼうせい)の印。  一見、平安時代の貴族のような格好だが、そこは現代。  動きやすいスーツの上からこれらを(まと)っている。  普通であれば警察官に職務質問をされてもいいのだが、むしろ警察官側が敬礼するのだ。  それだけ、妖怪退治の専門家は誰よりも重宝されるのだ。  目的の大広場に着くとすでに二人の人間がその場にいた。  不良かと思ったがどうやら目的はリンエンと同じらしい。 「キミがリンエンだね」  袖が長く手まで隠れている服、斜めに被ったニット帽が印象的な背がわずかばかし低い青年が袖を捲って手を差し伸べてきた。  リンエンは言われるがまま、右手を差し出したが手が触れかけた瞬間、リンエンは手をひっこめた。 「さすが天才祈祷師。(あずま)凛縁(リンエン)」  男は指に何かトゲのようなモノを隠していた。  まともに刺さっていたら痛いなんて優しいものではないだろう。 「ボクは西沢(にしざわ)彪雅(ひょうが)ま、今の通り、忍者をやっている。アクロバティックならおまかせあれ」  ヒョウガはニヤついてるがそのニヤつきも本物かどうかわかったものじゃない。  常に疑わないと安心はできないだろう。 「あそこのバカデカい剣を持っているのが……」 「南風(みなみかぜ)天馬(てんま)だ。自分の名前くらい自分でいえる」  リンエンが持っている太刀より遥かに大きく、背中に大剣を背負(せお)っている大きな男がいた。  服装はタンクトップにジーパンとヒョウガ以上にラフなスタイルだった。  タンクトップからはその強靭な肉体を物語るほど筋肉が盛りあがっていた。 「コイツ、ボクのさっきの握手にハマったんだけど手が分厚すぎて、効かなかったの」 「俺に小細工は効かない」 「んで、もう1人いるんだけど、遅いなー」 「それにしても妖怪一体に四人もいるのか?」  テンマは剣を肩にかけ、野太い声で言った。 「うーん。初の妖怪警報だし、ボクたちも実戦て初めてじゃん?」 「よく、お国は任せてくれたものだ」  リンエンは呆れながらため息をついた。 「うーん。ボクたち以外にもいるっぽいけど、とりあえず、この三人でってことで!」 「俺はなぜだかすごくイヤな予感がする……」  リンエンの予感は当たっていた。
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