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第6話 四人目の討伐者
(あの日以来、ヤツとは出会っていないが)
「あれー? リンエン先生じゃないですか?」
リンエンは誰もがわかるほど肩がビクっとあがった。
「お久しぶりです!って昨日? 一昨日でしたっけ?」
よれよれのスーツに似合わない長剣を持ちヘラヘラと笑う男。
東凛縁に恥をかかせた男。
「おい、鬼神頼光。あの後どうなったんだ!?」
「あのあとって?」
「道場での……」
「あああ! リンエン先生がぶっ倒れたやつ!」
「そうだよ!」
「なんだなんだ? お前ら知り合いなのか? 似合わない知り合いだな」
ヒョウガが頭に腕を組んで、疑問気味に言った。
「あのあと? どうもしないよ。あの後すぐ、ぬらりひょんのおっさんに刀渡されただけ。意味がわかんねぇ」
「ぬらりひょん……だと?」
全員は一斉に頼光の顔を凝視した。
「え……と。自分をぬらりひょんだと思いこんでいるおっさんというか? あだ名みたいなんかな?」
「こんなときにややかしい名前を出すんじゃねぇぞガキ!」
ヒョウガは性格が変わったかのように怒りの言葉を頼光にぶつけたがリンエンは頼光の言葉の嘘を見破っていた。
(妖怪は我々が感知する前から現れている……)
「ていうかお前? 頼光はなんの人なわけ?」
「えっと、オカルト記者だけど?」
ヒョウガは頼光のネクタイを取り、自分の顔に近づけた。
「さっきからバカにしてんの? こっちはマジで妖怪退治しに着てんだぞ! 取材ならお断りだ!」
「えーだってぬらりひょんがー」
「さっきからぬらりひょんってなんなんだ!」
「ヒョウガ、やめておけ」
リンエンは頼光に対して苦い顔をしていた。
ヒョウガはずっと黙っていたテンマに子猫を持ち上げるかのように頼光から引きはがされた。
「リンエン! テンマ! なんなんだお前らも!」
テンマとリンエンは視線を真っ直ぐと闇の方へ向けていた。
コツコツとわざと鳴らしているかのような靴の音が聴こえてきた。
そこからテンマに匹敵する大男が現れた。
無骨な髭面、大正時代に流行った様な背広に大きなカンカン帽子、手にはステッキ。
時代遅れな格好の男。
「お、ぬらりひょんじゃん!」
頼光は呑気に男に手を振った。
「ぬらりひょん!? あんなダンディなおっさんが!?」
テンマもリンエンも冷静だったがヒョウガは驚きを隠せなかった。
「そこの坊ちゃんは妖怪がみんな細っこかったり、目を向いていたりする見た目をしていると思ってたのかな? すまないね。男前で」
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