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第7話 破魔之天王《はまのてんおう》
ぬらりひょんはヒョウガを完全に子ども扱いして接している。
「な、な!?」
「落ち着け、ヒョウガ。私も信じがたいが目の前を見るのも妖怪と対峙する者の務めだ」
リンエンも極力落ち着いているが、以前起きた味わったことのない霊能体験で内心は恐怖を感じていた。
「そこの祈祷師くんもそうとう俺が怖いと見た」
リンエンの心はぬらりひょんには透けて見えていた。
「なんだ? ここにいるやつらは妖怪退治とか抜かして妖怪も見たことないのか?」
ぬらりひょんは挑発するように言ってきた。
「うーん。オレも信じたの一昨日出しなー」
「その前は占い師と勘違いしてたからな頼光『様』はな」
ぬらりひょんが頼光に『様』付けたことに違和感を覚え、テンマは訊いた。
「頼光様って言うのは冗談で言っているんだよな?」
ぬらりひょんはニヤけた口を真っ直ぐにし、テンマたちを見下すように言った。
「この方は『破魔之天王』の生まれ変わり! 鬼神頼光様だ! 本来なら貴様らのような下級の奴らが易々と口を聞いてはならんお人だ!」
頼光以外はぬらりひょんの言葉に目を見開いたが、ヒョウガが頼光の胸倉を掴んだ。
「お前! あのおっさんに何をした!」
「い、いや、な、なんかあの人がそう言ってるだけで!」
「ボクたちが下級だと! ボクたちは生まれた時からこの日のために修行を積んできたんだぞ! お前ごときの能天気やろうと一緒にするな!」
ぬらりひょんは頼光からヒョウガを離そうと腕を掴んだがその前にヒョウガは消え、ぬらりひょんの背中にクナイを当てていた。
「動くなよ、おっさん……動いたらぶっ刺す!」
「やれやれ……もう、妖怪はいるというのに、気付かないとはな……」
「あン? 自分のことでも言ってるのか?」
ヒョウガはぬらりひょんとは別の気配を感じ、気配のした方を急いで見ると目の前から火の玉が飛んできた。
瞬間的にクナイを振り下ろし、火の玉を斬ると、割れた途端に骸骨の顔が浮かび上がり消えていった。
「ほう? お主、やるではないか」
「あの程度でびびるかよ……! んで? 肝心の破魔之天王様は?」
ヒョウガは頭を抱え込んでしゃがんでいる頼光を見下した。
「あれでは刀も泣いてるな」
テンマも呆れて、剣を構え戦闘の準備に入った。
リンエンだけが、頼光の姿を真っ直ぐに見据えていた。
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