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【夜光虫】
新聞配達のバイクが走る音で目が覚めた。
ああ、もう、そんな時間なんだな。
外はまだ暗い。
うん、暗い方がいい。
フラフラと外に出る。
小さな公園に灯る街灯に誘われるように私は、その街灯の近くの古びたジャンクジムに登り、街灯に群がる夜光虫を眺めていた。
どうして、こんなに眩しい光に吸い寄せられるのだろう?
やがて、ぽとりぽとりと夜光虫は公園の砂の上へと落ちて行き、息絶えてしまった。
きっと太陽の……あの、ギラギラし過ぎる程の光は見たくないのだろう。
そうこうしているうちに、ぼんやりと空の色が薄紫色に変化していた。
ぼちぼち帰らないと朝日で私は溶けてしまう。
さて帰るか。
私は夜光虫の亡骸のお墓を手早く作り、小走りで家路に就くことにした。
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