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「さて、瑠璃子ちゃん。……大きな咬み傷だったけども、臓器まで傷ついてはいなかったのは幸いだった。ただ、背中の皮膚がビリビリになってたから、たくさん縫わなきゃいけなくってね。広範囲に毛を刈ってしまったのを謝ります。……その、もし寒そうだったら、風邪ひかんように毛布でも被せてあげなさいね……」 「……すぐ生えるのでは?」 「どうだかなぁ。ポテト先生、治すには治すけど、縫うの自体はそんなにうまくねぇから。わりと派手に跡残るんだよな」  と、魁が指さしてみせたのは己の顔である。継ぎ()ぎの人形を思わせる傷だらけの御面相は、この察馬医師の手によるものだったらしい。 「頭もほら、こことかずっとハゲてんだ。腕毛も脛毛も、縫われたとこはもう全然生えてこねぇわ。だははははは」 「ああもうごめんね! 特に顔はね、本当に申し訳ないと思ってる! でも君はねぇ、ちょっとあまりにも怪我し過ぎなんだよねぇ……!」  銀弥が再び瑠璃子の隣にやってきた。  包帯の巻かれたトントンの小さな背に、触れるか触れないかという五指を伸ばす。優しく撫でる仕草の後、手を引き、瑠璃子の顔を覗き込むように見た。 「……後で持っていく。あったかい毛布」
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