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駅前の噴水の側で彼がやって来るのを待つ。
多忙な彼との久しぶりのデートに思わず顔がにやけてしまう。そんなわたしを行き交う人達は不思議そうに見つめてから……空を仰ぐ。
お天気お姉さんの言った通り、今日の空は晴れ渡っている。雲ひとつなくて、雨が降るだなんてとても思えない。
だけど、わたしの格好はレインコート、レインブーツ、そして傘。皆が首を傾げているけどこれでいいの。
だって今日は彼との久しぶりのデートだから。
いつも遅刻してくる彼を待つ時間が好きだ。今日はどんな風に彼と過ごそうかと考える。
ご機嫌に鼻歌なんかを歌い始めた時だった。ポツリ、と水滴が鼻の頭を叩いたのは。
──ポツ、ポツ、ポツ……
空から降ってくる水滴が弱々しくレインコートの上に落ちて、そして滑っていく。
わたしは慌てることなく傘を開いて頭の上に翳す。
──しとしとしと
黒い雨雲が青かった空を覆い、静かに雨が降り始める。
あと少し、あと少しね。
──バラバラバラ
傘とレインコートを叩く音が強くなった。
もうすぐ、もうすぐね。
──ザーザーザー!!
足元がぐちゃぐちゃになる程のどしゃ降り。でも大丈夫、レインブーツを履いてるもの。
それに、ね。
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