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小さな秘密
「あげるよ」
ちょっと照れくさそうに沙也加が言った。
(えっ?)
「それ、あげる。いいの、2つあるから」
小6の秋だった。あの頃ぼくらはいつも5、6人のグループで、男女互いにちょっかいかけ合い、ふざけたり、叩いて逃げたりするような悪ガキ盛りの間柄だった。
そんなある日、いつものように沙也加の机から鉛筆をとって逃げようとしたぼくに、沙也加がふとそう言った。
「あげるよ……」
鉛筆は可愛いキャラクターものの鉛筆で大事そうにしていたから、「あげるよ」なんて反応予想してなかった。逆に調子が狂って、
「あぁ…、ありがとう」
なんて言ってしまって、くるりと向きを変え、自分の席にもどってすぐ筆箱にしまった。
その日、家に帰って、鉛筆とクラス写真の沙也加を交互に眺めた。
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