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小さな秘密
次の日のやはり放課後、いつもの男女グループでふざけてた時、健太がドッジボールを沙也加に向けて投げつけた。ところが、沙也加は上手によけてボールは近くに置いてあった彼女の手さげかばんを直撃した。
いつもだったらボールをすぐに拾ってやり返してくるのに、めずらしく沙也加は顔を曇らせ、慌ててかばんの中を覗きこんだ。
暫くして取り出したのは、真っ二つに折れた消しゴム鉛筆。
沙也加の哀しそうな目と、目が合った。
昨日あげたばかりの消しゴム鉛筆が二つに折れた映像は、ぼくの気持ちも複雑にした。
翌日、また雑貨店に立ち寄ることになる。そして、前と同じ消しゴム鉛筆を握ってレジに出す。
デジャブのように、またみんなの目を盗んで、沙也加にそれを渡した。
「あのさ、折れたから……」
沙也加の顔が一気に明るくなった。
こうして二人だけの秘密はそれからも続いた。もっともめぐみは全部知っていたが。
女の子は、こういう世界を仲のいい女友だちには話したいようで、男は、こういう世界を人知れず秘密にしたいのかと、人のことは知らなかったが、何かを見つけたような気にもなった。
やがて秋は冬となり、年末を迎え、冬休みがやって来た。
正月に沙也加からの年賀状が届いた。
干支のうさぎの可愛いイラストの横に、
「今年も仲良くしようね!」
と書いてあった。
それを親に見られて、顔が熱くなった。
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