「ヘアスタイル、交換しませんか？」

新しい法律

「国民の皆さん、今日からハゲになりましょう！」

新しい秀野（しゅうの）総理大臣は宣言する。自分のヘアスタイルを頭部から取り外し、国民の前にハゲ姿をさらけ出す。

「今日からハゲている事を恥じる必要はありません！皆さんハゲているんですから。もう、ハゲているからって悩まなくていい。堂々としていればいいんです。ハゲ万歳！！」

それを聞いた国民は、恐る恐る自分の頭部に手を伸ばす。　

パコッ！

自分の髪の毛がカツラみたいに外れて、誰もが目を見開いてびっくりする。総理大臣の宣言した通り、国民たちは今日からハゲになった。取り外したヘアスタイルは、すぐにパチッとワンタッチではめる事が可能だ。

そして、そのヘアスタイルは誰とでも交換可能。気に入ったヘアスタイルの人がいたら、交換交渉をして了解が得られれば、誰とでも交換する事ができるのだ。いわゆるレンタルヘアみたいなもの。

そんな法律が出来上がった。

ハゲていた国民たちは大喜び。もうハゲで悩まなくていい。
「新しい法律万歳！」と叫んだ。

この法律により、ヘアスタイルを気にする人たちが増え、自信満々のヘアスタイルにする国民が増える。子供から若者、老人まで。年齢男女問わず交換が可能なので、みんな必死になって自分らしいヘアスタイルにチェンジするようになった。

そして、渋谷に新しく美容院通りという通りができた。MIYASHITA PARK のすぐ近く。

全国のカリスマ美容師がその通りの美容院に集められ、予約が殺到して人気を集めることとなる。

日本中に様々なヘアスタイルが流行する。

ヘアスタイル交換による新しい出会いを求める人々が増える。

ヘアスタイルから始まる恋。

ヘアスタイル交換による結婚も増える。

だから、みんな自分のヘアスタイルを美しく、カッコよく見せたいと思うようになる。

この物語は、そんなヘアスタイルに注目が集まった世の中の、色々な人たちの物語である。