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Villain For Villain8
そしてボクが認識を終えた直後、顔を出したrin選手の頭をDB選手の弾丸が撃ち抜いた。
ほんの一瞬だけ無が会場を過ぎ去ると夜空で最初の花火が花開くように一気に観客含め全員が盛り上がりを見せた。いや、正確には桃太郎と彼らを応援していた人達以外。
だがその戦いに悔しがりながらも彼らは拍手を送っていた。それは敵味方も無くしてしまうほどに良い戦いだったということだろう。そして会場の宙には盛り上がりの瞬間、スティックバルーンや飲み物、タオルや帽子などあまりの歓喜に観客が投げた物が舞った。
『決勝戦の激戦を最後はDB選手の吸いつくような見事なエイムが制し、Villain For Villain Japan cap優勝したのはOGRES FACE GAMEING!』
『いやぁー、見事な戦いでした』
舞台の上ではOFGと桃太郎の選手が互いを称え合っていた。モニター越しだったし優勝カップと司会の人の後ろ側だったから正しいかは分からないけどDB選手と話をするrin選手は少し泣いているように見えた。
「全然知らないゲームで全然知らないチームの対決だったけどそんなの関係ないぐらい最高だったなぁ」
内側で燃え盛る興奮の炎とは裏腹に声は意外と静かで冷静だった。
そんなボクの視線先のモニターではOFGの選手が空高く優勝カップを掲げていた。激戦を制して無数のスポットライトに照らされながら称賛の拍手と熱い眼差しを浴びる。
本人たちも達成感とかまだ冷めやらぬ興奮とかで高揚してると思うし、そんな状態で自分へ向けられた拍手を浴びるってどんな気分だろうか。どれほど気持ちがいいんだろうか。教室でもいつも一人、お昼も誰も来ない場所で一人、拍手を送る大勢の一人になることはあっても浴びる側になることはない。多分、その気持ちはボクが知ることのできないものなんだろうな。ボクの上にスポットライトは降り注がれず舞台の端で、主役に向けられたスポットライトのおこぼれすら届かない場所で劇を終えるのかもしれない。
そんなことを考えてしまい少し複雑な気持ちになってると優勝カップの前にOFGメンバーが一列に並び二千万の数字が書かれた賞金パネルが授与された。司会の人は感想を興奮気味で話しながら一番右の選手の傍まで足を進める。
『KnBee《けんぴ》選手。まずは優勝おめでとう』
司会はお祝いの言葉を言うと右側に分け目を作った塩顔の選手にマイクを向ける。
『ありがとうございます』
KnBeeと呼ばれたその選手は顔に似合う爽やさを備えていた。
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