【良い物見させて】秀吉君の推しごと【頂きました！】

癒やしの時間です！

　午後６時半。「お先しまーす」と気の抜けた声を上げて事務室を出る。教育総務課に異動して3年。もう目をつぶったままでも退勤できると思う。実際庁舎の窓口が閉まったのを良いことに俺はスマートフォンの画面を見ながらスイスイと職員通用口を目指していた。右手で画面をスワイプしながら左手はタイムレコーダーにカードを差し込む。ガリガリと音を立てながら出てきたタイムカードをホルダーに入れて扉を開けた。ちらりと顔を上げてから再びスマートフォンを見て、小脇に抱えていたジャケットを駐輪場に駐めたタイカブのシートに置いた。

　動画アプリを開く。登録チャンネルマークの上に出た赤い表示に「お」と呟く。動画タイトルは「カブのタイヤ交換するだけ」だ。二郎君からの供給来た。残りのデータ通信量と周囲の人影を確認してから動画を再生した。少しずつボリュームを上げる。動画の冒頭、挨拶もそこそこにタイヤ交換が始まった。軍手をはめた手元ばかりで顔はほとんど映らない潔さ。もちろん顔も好きだ。ほかのSNSではプライベートショットも存分に拝める。だが動画のこの媚びないスタイルもまた良き。最高。何故いいねが1度しか押せない仕様なのか理解に苦しむ。何度も押せる課金システムとかあったらいいのに。