『鏡合わせの家』

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ある男が、故郷に帰省した。 出迎える父母。 しかし、なぜかわからないが、 顔を隠している。 顔を見せてくれというが、 見せてはくれない。 『顔に怪我をしているのだ』と父母は 包帯で顔をぐるぐる巻きにしている。 よほどの重症なのか首にまで包帯を巻いている。 あれでは苦しかろう。   実は、この二人は、 泥棒だと見抜く息子。 だが、実は、俺もだ。と白状する偽の息子。 金目のものをたんまりとためこんでると聞いたが、 なしのつぶて、何もありゃしない。 帰ろうとしたら息子が帰ってきたので、 父母を演じた。という。 見てみりゃ幸せそうな家族が住むには、 ちょうどいい家じゃないか、 こんな家に住みたいもんだねと泥棒たちは、 羨ましそうに部屋を見て廻る。 協力して探すが、やはりなにもない。 今日は収穫なしかと、すっぱり諦めて、家から出ようと玄関から一歩出たときに、気づく。 まるで鏡合わせのようにそこは同じ座敷が無限に続いていた。 いくら、探しても出口がない。 『出られない!』 三人の泥棒は、途方に暮れたように 膝から崩れ落ちた。
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