6・雷鳴

11/18
前へ
/104ページ
次へ
 アルコールが匂う吐息も、まったく嫌じゃなくて。  いや、甘美な気持ちにすら、なってしまって。  酒ではなく、田所に酔わされている自分を必死で奮い立たせた。 「こんなこと、するつもりなかった。でも、あなたが……あんなことを言うからいけないんだ。別の女と付き合えばいいなんて。俺が好きなのは、あいつじゃなくて、あなたなのに」 アルコールの匂いが混じった熱い吐息をつきながら、田所はそう告白した。  だめだ。頭がくらくらする。 意識とは別のところで、身の内から喜びがこみ上げてくる。  想いを寄せている相手からの告白。  これが10年前だったのなら、なんのためらいもなく、彼の胸に飛び込めばいいだけだったけれど……
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

377人が本棚に入れています
本棚に追加