2・クライアント

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 緊張してるからか少し上擦っていたけれど、ハキハキした聴きやすい声だ。 「では、拝見させていただきますね」  そのパンフレットは取り立てて特徴のない、ありきたりなデザインだった。  こういうオーソドックスなものが好まれるのかな。 「前のデザインを踏まえたほうがいいのかしら。それとも、180度違うものをお望みですか」 「えーと、その辺の打ち合わせもちゃんとできてなくて……本当、すいません」  急に言われて来たのはわかってるけど。  うーん。これじゃあ、打ち合わせにならない。  別に日程変更してもらっても構わなかったのに。  そう思ったが、でも、それはここにいる彼のせいというわけではない。
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