2・クライアント

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 間違いなく、性格は良さそうだ。  エレベーターホールまで彼を見送り、応接室にもどった。  田所が持参した資料を封筒にしまい、自席に戻ろうとしたとき、「杏子」と声をかけられた。  見ると、亘が会議室のドア口に腕を組んでもたれかかっていた。 「とし……所長」  危うく下の名前で呼びそうになる。  彼は姿勢を正して後ろ手でドアを閉めると、わたしのほうに歩み寄ってきた。 「あいつ、なんか見とれてたぜ、杏子に。気があるんじゃない?」 「まさか。あんな若い子がわたしなんかに興味持つわけないって」 「そんなこと言って、まんざらでも無さそうな顔してたじゃん。つまみ喰いしようと狙ってんじゃないのか」
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