2・クライアント

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……仮にも、自分が現在進行形で付き合っている女に向かって、よくそんなことが言える。  こんな無神経な男だったっけ。  ちょっと呆れたけれど、まあ、亘も本気で言っている訳ではなく、ありえないことと、たかを括って、軽口を叩いているんだろう。  目くじらを立てるのは大人げない。  わたしも軽口で応酬することにした。 「バカ。あるわけないでしょう。それにその発言、完全にアウト。大企業ならセクハラで懲罰委員会にかけられるわよ」  亘は口の端を少し引いて、かすかに笑みを浮かべると、人目につかない応接室なのをいいことに、わたしの耳元に唇を寄せ、囁いた。 「じゃ、個人的に罰してもらおうかな。今夜」
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