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目が覚めたわたしは、のそのそとベッドから降り、テレビの横の小引き出しから、タバコとライターを取り出した。
吸うのは、亘が帰っていったあとだけ。
紫煙を思い切り吐き出すと、虚しさも同時に吐き出せるような気がする。
それが錯覚でしかないのは、百も承知だ
結局、煙草一本吸うあいだに導かれる結論はいつも同じ。
亘との不毛な関係にすがっている自分の弱さに気づくだけ。
恋愛初期の熱情はもう失せていたけれど、亘のことは変わらず好きだった。
身も心もしっくり馴染んだ男との時間を惜しむ気持ちは強い。
結局、とくにアクションを起こすわけでもなく、なんとなくその日その日をやり過ごしていた。
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