2・クライアント

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 ふたりが話しているあいだ、わたしはそれとなく彼を観察していた。  紺系のスーツに無難な水色のタイ。  爽やかなビジネスマン風ショートヘア。  一言でまとめると、清潔感あふれる実直な好青年といったところか。  顔はなかなかイケてる。  学生時代、かなりモテたんじゃないかな。  下級生の女子に、高校の卒業式の日に告白されそうなタイプ。  それで、その子と付き合って、そのままゴールイン。  地元で幸せに暮らしました的な将来が目に見えるよう。  つまり、わたしとは、真逆の世界に生きていそう……  そんな好き勝手な妄想を巡らせていたら、当の本人が、ちらちらとこっちを見ているのに気づいた。  そして、目があった。
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