2・クライアント

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 もしかして、人の心を読む能力の持ち主だとか。  わたしの妄想、見透かされてたりして。  いや、そんなわけないな。  目を逸らすのもおかしな気がして、わたしは余裕ある態度で笑みを返した。  すると、田所は我にかえったような顔をして、視線をそらした。  実は、わたしに見とれてたとか?  いや、それもない、ない。  きっと、気になることでもあったんだろう。  知り合いの誰かによく似ているとか。 「えっと、じゃあ具体的なことは、担当者が承りますんで」  亘に促されて、わたしは名刺を差し出した。 「今回、担当させていただきます、佐久間です。よろしくお願いします」  彼はきちんと両手で受け取り、それから自分の名刺を返した。
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