2・クライアント

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〈N市教育委員会、生涯学習課、田所優〉  男性にしてはやけに華奢な指先が目を引いた。  すんなりとしたきれいな指だった。 「たどころ、ゆうさん?」 「〝ゆう〟じゃなくて〝すぐる〟って読みます。完全に名前負けしてますけど。よろしくお願いします」  田所は深々と頭を下げた。 「じゃあ、佐久間。あとはよろしく」  亘は席を外し、田所とわたしのふたりが残された。  田所はごそごそとカバンを探って、A4サイズほどの茶封筒を取り出した。 「こちらに以前配っていたパンフレットが入っています。新しい原稿もお持ちしようと思っていたんですが、何しろ、課長の欠勤が突然のことだったんで……」
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