4人が本棚に入れています
本棚に追加
もうひとりの勇者
日が暮れたころコウが着いた村では、狼型のモンスターたちが村人を襲い、建物という建物を壊し暴れまわっていた。
「大丈夫ですかっ?」
「助けてっ、家族が大変なんだ」
コウは、訓練で慣らした剣術でモンスターをあしらいながら倒し続けた。
「皆さんはこちらへ逃げてください!」
敵と対峙しながらも視野の広さで、村人を退避の指示を出し、村人たちはその声に従い戦いが収まる時を待った。
「ふぁーっ。もうそろそろでヒーローの出番ってか?」
夜明け前になりやっと村についたシュウ。
そこで目にしたのは、一箇所に集まる人々の塊。
「勇者様、ありがとうございます!」
「勇者様!この村にずっと居てください!」
「俺たちにも剣術を教えて下さい!」
コウの周りに集まった人だかりからは、感謝の言葉や尊敬の意ばかり集まっていた。
「いや、俺は当然のことをしたまで。勇者などではありません。」
「おーい、勇者はこっちだぞー……っ痛」
人だかりに手を振りながら叫んでいると、両手に袋を抱えた老人にぶつかられ。
「おっと!……あんたも勇者さんにあやかったほうがよいぞ!コウ様というのじゃ!昨日のご活躍にも関わらずそれはそれは謙遜なさるのじゃ。この麦を渡さなくては。」
「はぁ?あいつは俺のサポート役だっての。そんな勘違いする村なんか助けにこなくて良かったぜ。」
いつも自分に向けられる尊敬の念が、自分のサポート役だとしか思っていなかったコウに向けられ、自暴自棄になりその場から離れた。
最初のコメントを投稿しよう!