もうひとりの勇者

1/1
前へ
/6ページ
次へ

もうひとりの勇者

日が暮れたころコウが着いた村では、狼型のモンスターたちが村人を襲い、建物という建物を壊し暴れまわっていた。 「大丈夫ですかっ?」 「助けてっ、家族が大変なんだ」 コウは、訓練で慣らした剣術でモンスターをあしらいながら倒し続けた。 「皆さんはこちらへ逃げてください!」 敵と対峙しながらも視野の広さで、村人を退避の指示を出し、村人たちはその声に従い戦いが収まる時を待った。 「ふぁーっ。もうそろそろでヒーローの出番ってか?」 夜明け前になりやっと村についたシュウ。 そこで目にしたのは、一箇所に集まる人々の塊。 「勇者様、ありがとうございます!」 「勇者様!この村にずっと居てください!」 「俺たちにも剣術を教えて下さい!」 コウの周りに集まった人だかりからは、感謝の言葉や尊敬の意ばかり集まっていた。 「いや、俺は当然のことをしたまで。勇者などではありません。」 「おーい、勇者はこっちだぞー……っ痛」 人だかりに手を振りながら叫んでいると、両手に袋を抱えた老人にぶつかられ。 「おっと!……あんたも勇者さんにあやかったほうがよいぞ!コウ様というのじゃ!昨日のご活躍にも関わらずそれはそれは謙遜なさるのじゃ。この麦を渡さなくては。」 「はぁ?あいつは俺のサポート役だっての。そんな勘違いする村なんか助けにこなくて良かったぜ。」 いつも自分に向けられる尊敬の念が、自分のサポート役だとしか思っていなかったコウに向けられ、自暴自棄になりその場から離れた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加