老いた翼。若き翼。

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 新之助の紹介に始まり、大切な姉の側に相応しきと認める鷹一郎。まだ若干胸につかえるものはあるが、頷く雪成。 「よいちが認めてんなら、まぁ……俺も認めてやるよ……けど、そんな良い男なのに、何で上様は許してくれないんだ?」  雪成の純粋な疑問へ、鷹一郎は一瞬言葉を詰まらせたが。 「姉上の御立場が、大きいやも知れぬ……元より父上は、第一子である姉上が世継ぎと成られる事を強く望んで居られた。更に、其の縁談も旭日川をより強固にすべく、家臣団から最も力ある領地の家をとな。雪も、世を学ぶ際に過去の戦乱を耳にしたとは思うが……」  鷹一郎の話へ、雪成も腕組みしつつ己の中にある記憶を辿る。 「凄く昔だよな。旭日川様の御先祖が、多くの家を束ね上げて、秩序を築き上げたって……」  鷹一郎は、頷きながら。 「ああ。学舎等では、そう深く掘り下げられる事は無いやも知れぬが……――」  此処で鷹一郎が、己の学んだ現在に至る迄の歴史を話し始めた。  此の島国には、多くの領地と其れを管轄し、守る武家が存在する。其の殆どが、旭日川の家臣団の一員とされて居るのだ。故に旭日川は現在、事実上の絶対的な存在として天下に君臨して居る。  今は昔。各々の領地を奪い、奪われの繰り返しで、欲の果てによる戦乱の世を煽った有力な家々が在った。其れを、旭日川の先祖が平和を望む多くの弱小の家々と協定を結び、多数の領地を纏め上げたのだ。弱小多しと言え、塵も積もれば。其れは、平和を望む多くの大きな力と成りて。相反して戦で天下をと意気込む家々を、遂に捩じ伏せる迄に強大なものへと。実は、旭日川に一度鶴が来たと伝えられて居るのは此の時代らしい。
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