老いた翼。若き翼。

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 其れより、訪れた戦無き平和な世。そんな領地を守る各武家には、旭日川の家臣団と正式に認められた家々と、従属の誓いを立てて監視と通常の税は勿論、他領地への賠償と称し年に一定額の支払い義務を持つ家々が混在する。そして次に、旭日川へ誓いを立て、納税も勿論従うて居るが、万が一戦となった場合は完全中立の防戦のみとして、戦の放棄を願い出た領地も。其れ等は弱小領地故、大きな戦に呼ばれては、後に領地の維持や民の平安が保たれぬとの事情がある為だ。旭日川の先祖は、此れを許容し、万が一には旭日川より加勢をとの協定迄を結んで居ると言う。 「――先で語った、過去の戦より監視下に置かれる家の力を抑える為に、増税は勿論、協力関係にある他家と旭日川の血を繋ぎ更に関係を強固にしたりと……だが、長年そうして保たれた均衡も、近年弱まりつつある」  静かに告げられた言葉に、雪成の眉間へ皺が寄る。 「何でだよ……?」 「時代と経済の歩みにより、要監視の家と旭日川と通じる家と少なからず提携を結ぶ傾向が増えたのだ。勿論、公に出来るものでも無いが、此方も把握しながら、誓いの範疇であれば安易に咎める事も出来ぬ」  依然鷹一郎の語る声は冷静だが、雪成には何やら不穏な状況に感じて。 「そ、其れって、大丈夫なのかよ……?」 「不安があるからこそ、であろうな……以前にも少し話したが、婚姻とは家と家の契約でもある。現状父上が、我等や姉上の伴侶に政治的意味合いを持ち込まんとするのは自然だ」
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