老いた翼。若き翼。

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 溜め息交じりの言葉となった鷹一郎。己で語りながら、雲雀と新之助がどうしても気に掛かって。恐らく、雲雀が後継を拒んで居たのは其の背景に協力が出来ぬからであろう。其れの原因が、寄りによっての新之助。此れが鷲正の逆鱗に触れたと。何とか、良い方向を見出だしてやりたいが、己の力ではどうにも。  考え込む鷹一郎へ、雪成が。 「なぁ、よいちは本当に正室が俺で大丈夫だったのか……?」  弱気な声が聞こえて来た。我に返り、鷹一郎がそちらへと気を戻すと、雪成が俯いて落ち込んで居る。雲雀の話に、婚姻事情を含ませてしまった事が雪成の心を煩わせた様子。だが、鷹一郎にとっては可愛い悩みだ。微笑み、雪成の手を引き其の腕の中へとおさめてやる。 「福を呼ぶ鶴が、らしく無いことを……雪が私の元へ来た事は、旭日川の為ではないか」  鷹一郎の腕の中、そう優しく諭されるも雪成の心に掛かる霧は晴れぬ。やはり、此の婚姻は通常であれば不自然なもの。鷹一郎は、側室が産んだ末子とは言え、後継の資格も持つ旭日川の若君なのだから。本来、呉服屋の坊を正室に等迎えぬ筈。己の家が特殊故、鷲正の理解や受け入れはあるが、雪成の胸中ではまだ何か合点の行かぬ部分があるのだ。  雪成は、鷹一郎の胸に顔を埋める。背へ回した手で、鷹一郎の衣を握り締めて。 「けど、旭日川にとっては俺が来るより、余所の姫さんが来る方が良かったんだろう……俺の家なんて、別に大きな影響力なんて無いぞ……」  そんな拗ねた様な声に、真らしく無いと鷹一郎は目を丸くさせた。何時も前向きしか知らぬ雪成が、随分卑屈になって居ると。  だが、鷹一郎がそんな雪成の頭上へ唇を落とす。
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