老いた翼。若き翼。

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 中でも、根付が最も気に入った様子。其の精巧な造りへ舌を巻き、指でなぞりながら眺めて。そんな鷹一郎を瞳に映して居た雪成は、其の鷹へ触れる鷹一郎の手を握り締める。 「よいち。雲雀様と、新之助殿を助けてくれ」  神妙な表情で出た言葉へ、鷹一郎は一瞬目を見張り声を忘れるが。 「そうだな……勿論、尽力はして居るのだが……」  返事は、少し複雑なものへ。任せろとは言えない己が不甲斐無く、僅かに視線も反らしてしまう。だが、雪成は神妙な表情を笑顔に変えて、鷹一郎の顔を覗き込んだ。 「手っ取り早い方法があんだろう」  雪成の言葉に、鷹一郎は眉間へ皺をつくる。 「手っ取り早い……何だ、何か術があるのか」  雪成は、鷹一郎の手を握る己の手に力を入れる。 「ああ。よいちが、天下人になるのさ」  目を見張り、固まる鷹一郎。 「な……」  声が続かぬ鷹一郎とは逆に、雪成が口を開いて。 「よいち。こうなっちまったら、よいちが上様へ声を上げられる立場に成らなきゃなんねぇ。先ずは、此の領地を変えて、結果を出すんだ。鸛一郎様、梟一郎様以上の結果を」  雪成が出した答えは、鷹一郎が避けて来た後継争い。鷹一郎の中で、其の考えが無い訳ではなかった。だが、迷いがあって。当初より、兄と競い合わされる事へ常に疑問を抱いて来た。父への反発も、まだ其の胸の奥には。 「しかし、早急には……」  そんな言葉で濁そうとするが、雪成の手は更に強く力が込められる。 「そうさ。容易くなんて結果は出ない、多くの時も掛かるし、雲雀様と新之助殿の裁きも慎重に引き伸ばす必要もある。けれど、今抱える問題には、其れしか無いだろう……今のよいちが声を上げても、上様の御耳には届かない」  現実を言葉にする雪成の瞳は、厳しくも強い。 「私は……」
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