老いた翼。若き翼。

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 其の宵。鷹一郎は、約束通り早くに雪成の部屋へとやって来た。又も襖を閉めた処で、胸の中へ飛び込んで来たのは。 「お疲れ、よいち」  やはり美しく、眩しい笑顔。鷹一郎は、答えるよりも先に其の唇へ引き付けられてしまう。 「ん……っ」  其れは、軽く触れるだけとはならず。此の罪な笑顔は、無意識に鷹一郎を惑わせるのだから。深い口付けに吐息が漏れ、僅かな水音が静かな部屋に響き出す。惜しげに一度離れた、二つの唇。頬が染まり、瞳にも熱が籠り出した雪成が鷹一郎へ身を寄せる。 「ふ、布団連れてけよ……」  此の言葉へは、大抵鷹一郎の返事は無く、其のまま閨へと運ばれてしまう雪成。丁寧に下ろされた布団の上。ほんのり灯る光は、まだ恥じらいを誘う。そんな雪成の仕草はどうしても、更に艶を増し妖しく魅せて。 「雪……」  帯も解かれぬままに、其の肌へ滑り込んだ手。雪成の肩が跳ねた。 「あ……」  吐息と共に出た甘い声に、鷹一郎の手は止まらなくなる。乱れる衣から白い肌が露にされて。 「んっ……あっ、あ……!」  触れる鷹一郎の指が、雪成を切なくさせる。此の腕に強く抱かれる度に、胸へ広がる霧が徐々に濃くなる様で。 「雪……」  低く甘い声が雪成の耳を擽り、翻弄させる。熟れて熱を帯びる処へも、遂に。 「やっ……あぁっ、あ……っ――」  雪成の声は、甘く鷹一郎の心を揺さぶり、誘う。言葉も忘れて愛しい雪成へ触れ、激しく其の身を何度も貫いて。其れでも足らない。更に欲し、溺れるばかりで。  久方振りの甘く熱い触れ合いは、何れ程であったろう。漸く解放された雪成であったが、其の容顔にはまだ残る熱と疲労から、更なる色香を醸して居る。
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