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鷲と鷹、鸛と梟。旭日川が二つに割れた。此れはやはり、当初想定していた最悪の事態を招く方向へと傾いてしまう。
鸛一郎、梟一郎は、旭日川と因縁ある家を傘下へおさめたと。更に其れは、嘗ての戦にて有力とされた家々。賠償、増税と枷は多くも、密かに家の力を育て、蓄え。同じく、屈辱に甘んじる家々との提携もあった様だ。其れに止まらず、旭日川の息掛かる家へも。監視を掻い潜り、慎重な提携、更には依存をさせる迄に。日の当たらぬ惨めな姿を糧に、何時か此の状況を脱する為。旭日川に敗れた屈辱、遺恨。其の無念は年月の分、代々の当主へと受け継がれて居たのだ。其処に訪れた今回の御家騒動は、正に先祖の導きともとらえたろう。
一方。鷲正率いる旭日川へ付くは、直結の家臣団は勿論、後継とされた鷹一郎。有力な家臣団なる家々も、此度の知らせへは酷く憤り、鷲正と鷹一郎と共に参戦を願い出た。しかし、他は嘗ての戦にて領地の事情より完全中立を願い出た家々が多く、更に遠方。そちらへは制約上、旭日川より参戦の通達は送れぬのだ。故に鸛一郎、梟一郎に付く家が上回ってしまう結果に。余程慎重に、時を掛けて此の事態に備えたのだろう。軍の数からは、苦戦を強いられる可能性が出て来た。
開戦の知らせが届いたと知らされ、鷲正の元へ鷹一郎が馳せ参じる姿が。しかし、出迎えた鷲正は、床よりの出迎え。老いた身に、此度の息子が起こした謀反は、精神的に大きな打撃であったろう。予てより誤魔化し続けた心の臓へ、大きな負担が掛かった様で。
「――済まぬ、鷹一郎。そなたを守ってやらねばならぬと言うのに……こんな時に……っ」
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