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鷹一郎の微笑みと共に告げられた強い意思。雪成は、答える代わりに唇を寄せる。受け入れた鷹一郎も、雪成への愛おしさが溢れて。
「ん……はぁ……っ」
雪成の甘い吐息が漏れる。程無く帯を解く絹擦れの音も。襟が肩を撫で落ちると、雪成の白い肌が薄明かりに照らされて。何時もと同じく魅せられ、誘われるままに其れへ触れる鷹一郎の指、唇、舌。
「あっ、ん……あぁ……っ」
触れる度に身を跳ねさせる雪成の声は、更に鷹一郎を誘う様に耳を擽る。
「美しい……私の雪……」
鷹一郎は、愛おしい思いと独占欲に囚われ、只雪成を求める。其れは、心地好い沼へと沈み行く感覚で。雪成も、己を突き上げる鷹一郎へしがみつき、離すまいと。
「あっ……あっ。もっ、と……もっと、よいち……っ、ああっ……!――」
切ない声。けれど、妖しく、甘く鷹一郎を煽って。其の夜ばかりは、幾度其の思いを放っても足らぬと。もう、互いに果てる迄愛おしい体を抱き締め合うたのだった。
眠りに就いた記憶は無い。けれど向かえた朝に、鷹一郎が先に目覚めた。余程疲労させたのか、何時も元気に動く雪成の身は、ぴたりと鷹一郎へ引っ付いたまま。名残惜しさあれど、鷹一郎は雪成を起こさぬ様に身を放す。
「例え此の身が失われようと、私の心はそなたのものだ」
静かに、告げられた誓い。雪成の額へ、優しい口付けを落とすと、鷹一郎は出陣の準備へと部屋を後にした。
其の後。雪成が目覚めると、鷹一郎の姿は無く。雪成は己の身に残る鷹一郎の熱を思い、憂える。しかし、振り切る様に己の両頬を強く叩いた。
「俺も、確り奥方やんなきゃな!」
そう己を叱咤した雪成も、出陣の見送りに向けて動き出して。
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