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そんな在る夜の事。側近等と共に、残る数で勝機を探る為、更なる策を思案し会議をして居た鷹一郎の元へ、突然勝由が勢い付け飛び込んで来た。
「――殿!東(アズマ)家が、我が軍へ加勢を!たった今、御到着下さいました!」
次に、他の家臣も順に飛び込んで。
「殿!石川(イシカワ)家の軍です!たった今到着されました!医術隊も!物資も!」
まだ報告は続く。
「飯田(イイダ)家もに御座います!我が軍へ加勢をと!」
止まらず続く報告に、鷹一郎や側近も声が出ず戸惑うばかり。何故なら。
「何だと……先の戦後に、完全中立を宣言した家々ではないか。通達はして居らぬ筈だぞ……何故……」
呟きと共に、眉をしかめる鷹一郎。勝由が一度唇を噛み締め、込み上げる熱い思いを抑えつつも、声を上げる。
「奥方様に御座います!一鶴家と繋がりある各御武家や財を成した家が、皆で一時協定を結び総出で動いてくれて居られるとの事……!」
そう。各武家へ、雪成が織った反物と共に届いた支援を乞う書簡を目にし、此の緊急事態に一時中立宣言を撤回する書状を即刻鷲正の元へ。勿論其れは形ばかり、返事等待たずに義勇軍として戦への参加を。そして、武家ではなくも富と人脈ある家々へは一鶴家が総出で声掛けを。そちらからは、鷹と鷲の軍へ多くの支援物資が。現在、此れ等どの家も一鶴の者を置いては居らぬ。しかし各現当主等は、家に代々伝えられる鶴への恩義を忘れては居らなんだ。勿論大きな出費は必至、己等が何を得られる戦ではない。だが、皆旭日川が此れ迄に築いた平和の在り方を支持して居る。そして、届いた鶴の一声。今こそ、鶴への恩返しであると。其々、此れ迄に築いた確かな人脈、富を抱え鷹の元へ馳せ参じたのだ。其れは、嘗ての如く大きな力へと相成りて。
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