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最初に思ったのは店に到着した時だった。
「どうしたんだよリョウ?」とアキラがこちらを振り返ったのと同時に、俺は田中南町玩具店を見上げる。
国道から外れて、住宅が集中する奥まった裏路地にその店は静かに息をするように建っていた。
雨に打たれ過ぎて、荒れた外壁の木造の一軒家の一階にその玩具店はあり、店の入り口の上の看板はところどころに穴が開き、かすれた黒い字で【田中南町玩具店】と書かれている。
「いや…なんか誰かに見られているような気がしてさ…」
「は? 何言ってんだよ?」
俺は首を動かして周囲を何度も見たが、人の気配はまったく感じなかった。
「いいから入ろうぜ!」
俺の気持ちなど露知らず、タクヤが笑顔でそう言うと、店の扉を開けて店内の中に入って行った。
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