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その数日後に、彼女から気になる人ができたと報告があった。彼女はソファベッドの上で俯きながら申し訳なさそうな表情を作っていた。(そのソファベットは彼女が激しく交わっていた場所だった)
「あなたはとても優しいし、すごくいい人だと思うわ。……だから、こういうことになっちゃったのは、全部私のせい」
「いや、いいんだ。僕の方にも非はあったと思う」と僕は言った。「当面、この家は君が使っていてほしい。必要なものは今持っていくから、その他の物は処分して構わない」
僕は必要なものを部屋から探した。しかし、本当に必要なものなんて一つも見つからなかったし、僕にとって本当に必要な物には全て彼女の匂いが刻まれていた。結局、僕の荷物はトートバッグ一つでも足りるくらいの量だった。
とにかく、僕は一刻も早くこの家から出ていきたかった。さっきからずっと眩暈がしているのだ。熱のこもった吐息。でかい男の背中。ピンと張ったつま先。
「ねえ。あなたには本当に申し訳ないことをしたと思っているの。だから、もしよかったら友達のままでいられないかしら?」
友達? 僕は彼女と友達になって何を話すのだろう? 彼女の生理が遅れていることの相談でもされるのだろうか。僕は試しに彼女と友達になってみることを頭の中で想像してみたが、あの薄汚れた白いスタン・スミスのスニーカーがどうしても頭から離れなかった。
僕は彼女の質問には答えずに、必要最低限の荷物を持って家から出た。
それから僕は彼女の全てを忘れようと必死に務めた。仕事に打ち込み、酒に溺れ、ゆきずりの名前も知らない女を抱いた。しかし、それらすべてが僕に与えたのは行き場のない空虚な気持ちだけだった。それは僕をどこにも導かず、ただ立ち止まって時間が過ぎていくのを辛抱強く待つことしかできなかった。
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