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「なぁ、お前、一色さんの事好きだろ」 休み時間。 目の前にいる洋一郎がいきなりそう言ってきた。 飲んでいた牛乳を吹き出す。 「な、何を」 僕は汚れた机をハンカチで拭いた。 「バレバレなんだよ。それで、いつ告白するの?」 「馬鹿、まだ話したこともないのに」 「関係ねーよ」 「まずは友達から・・・」 「あのな、男女の友情なんて無い」 洋一郎はそう断言し、しょうがないな、と何か考えるように腕を組む。 嫌な予感がする。 一色さんが転校してきてから、一ヶ月が経った。 あれから、僕が知る限り、一色さんは誰とも関わっていない。 話しかける子はいたけれど、「うん」とか「別に」とか、簡単に返事をするだけだった。 周りからは完全に浮いていた。 クラスの女子が一色さんの方を見てコソコソと言っているのは分かっていた。きっと、よくないことだ。 終礼の後、一色さんはいつも一番に教室を出る。 それをまた僕が目で追っていると、後ろから肩を叩かれた。 洋一郎が「追いかけるぞ」と楽しそうに言い、走って行く。 僕も慌ててランドセルを背負って後を追いかけた。 「何するつもりだよ」 そう聞いても洋一郎は答えない。 学校を出て、一色さんの後をつける。 「おい、帰り道は逆だろ?」 「いいから」 何がいいんだ。 段々と小学生が居なくなっていく。 周りが畑だらけになった時には、僕と洋一郎と一色さんしかいなかった。 「あのさー!」 突然、洋一郎が離れている一色さんに向かって叫んだ。
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