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一色さんがこっちを見た。
「こいつー!一色さんの事がー」
おい、何を言うつもりだ。
まさか。
「好きなんだってー!」
最悪だ・・・。
僕は洋一郎の顔を見る。笑っていた。
遠くにいる一色さんの顔はよく見えない。
でも、きっといつも見たいに仏頂面だろう。
数秒の間があった。
僕にとってその数秒が、妙に長く感じた。
一色さんはまた前を向いて歩き出した。
「あれ?おーい!」
洋一郎が走り出す。
もう止めてくれ。
心の中で思うだけで、僕はその場から動けなかった。
洋一郎が一色さんに追いつき、身振り手振りで何か言ってる。
時々僕の方を向いて、何か話しているが当然聞こえない。
今度は数分待った。
でも一色さんはまた歩き出し、洋一郎は僕の方へと戻ってきた。
息を切らしながら、あのさぁ、と口を開き
「自分で告白しない男は嫌いだってさ」
いつもの爽やかな笑顔でそう言った。
僕は、馬鹿みたいに口をパクパクさせる。
そんな僕に対し、優しい親友は肩に手を置きそう言うのだ。
「どんまい」
本当に、ふざけてる。
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