5人が本棚に入れています
本棚に追加
2
あれから数日、洋一郎とは口をきかなかった。
こいつが話しかけてきても、僕は徹底的に無視をした。
そう、まるで一色さんのように。
一色さんは変わらず無愛想だ。
クラスメートの女子からは「ちょっと可愛いからって、調子に乗ってるんじゃない?」と言われていることに、気づいているのかな。
何で、みんなと話さないのだろう。
「なぁ、司。いいニュースがあるんだ」
休み時間。洋一郎が話しかけてきたので僕は立ち上がる。
「一色さんのヒミツだよ」
ヒミツ?
洋一郎の顔を見ると、何度も頷いている。
「・・・ヒミツって?」
「これは、親友のお前にしか言えない事だ。あ、でも、お前にとって俺は親友でも何でもないのか・・・」
こいつのわざとらしいこの演技がムカつくんだ。
「いいよ、許す」
そう言うと顔を輝かせ、握手を求めてきた。それは無視し、それで?と聞いた。
「馬場ちゃんから聞いたんだけど」
今年から新しい先生としてやってきた馬場先生。運動神経が良く、皆から馬場ちゃんと呼ばれ人気がある。
「馬場ちゃんから?何を」
「一色さんの親、サーカスの団員なんだって」
「サーカス?」
「そう。それで、一色さんも毎日サーカスの練習をしてるんだってよ」
そうなのか。サーカスと言えば、ジャグリングや空中ブランコ。または、玉乗りか。
一色さんがそれらをやっている姿が想像つかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!