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「それが何?」
そう聞くと、洋一郎はニヤリと笑って答えた。
「実は一色さんは玉乗りが上手く出来ないらしい。そこで、お前が教えたら、惚れるだろ」
洋一郎は顔はいいが頭は弱い。
「僕の不得意分野は何でしょう」
「体育だろ?運動音痴だからなぁ」
「その僕が何を教えれるって?」
僕は自慢じゃないが運動神経が悪い。
球技・マット運動・ダンス。
何をやらせても鈍くさいのだ。
「だから、そんなお前が玉乗りが出来たら感動するだろう。クラスメートはお前の運動音痴を知ってるし、当然一色さんも」
この前の体育で、跳び箱に頭から突っ込んだ記憶が蘇る。
その時一色さんは下を向いていた。
「いや、でも」
「知ってるか?最近、一色さんがお前も見る目が少し変わってるのを」
「え?本当?」
洋一郎は自信満々の顔で頷いた。
「興味を持たれているうちに、頼りになるところを見せてみろ。一発だ」
そんな気もしてみた。
「でも」
「お前、あの仏頂面が喜ぶ姿を見たくないのか?」
僕は想像する。
玉乗りをし、ジャグリングをしている僕を見て笑顔で拍手をしている一色さんを。
僕は、挑戦してみることにした。
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