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プロローグ
「一色若葉って覚えてる?」
「いっしきぃ?」
目の前にいる、小学生の時のクラスメート達に聞く。
酒が入り顔が赤くなったクラスメートの一人が返事をした。
仲が良かった奴と、そうでない奴。
二十歳になっても変わらない奴と、変わった奴。
そして、この同窓会を楽しめる奴と、楽しめない奴。
僕はというと。
「誰だっけ?」
全く楽しめてなかった。
同窓会の案内が届いたのはつい先日だ。
当時、唯一仲が良かった水野洋一郎からの誘いがあった。
久しぶりの旧友からの連絡は嬉しく、洋一郎が行くと言ってたから来たのに。
「洋一郎、来れないかもって」
幹事がそう言い、皆あからさまに残念がった。
誘った僕に連絡を寄越すのが筋ってものじゃねーの?
「それでは、先生。当時の4年2組で一番印象深かったエピソードを!」
幹事のその声掛けに、場が盛り上がる。
当時はまだ20代で、保護者からも人気があった担任の山之内先生は、すっかり中年太りをしていた。
瓶ビールを片手に持って立ち上がり話し始める。
一番印象深かったエピソード。
その話に、僅か三ヶ月で転校した少女の話は出てこないだろう。
ただ僕の中では、あの無愛想な少女の姿は、今も色濃く残っているのだ。
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