エピソード3

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 お気に入りは、ムーミンだった。あの独特なキャラはアニメだからできたもので、テレビしか娯楽がなかったその時代では、ムーミンは子どもたちのヒーローだった。  男の子たちはウルトラマンや仮面ライダーに夢中になっていたが、芽衣はもっぱら、ムーミンだった。  今夜も父親は仕事で遅くなると連絡があった。だから、今夜も芽衣は一人だった。別段、寂しいとは思わなかった。いつものことである。  それより、大好きなムーミンを観ることの喜びが大きかった。  早速、芽衣は録画したビデオを再生した。すると、どこをどう間違ったのか、テレビ画面に若い男女が映った。二人はベッドに腰掛けて見つめ合っていた。そのうちに男性がシャツを脱いで上半身裸になる。それを見た若い女性が恥ずかしそうに口を手で覆った。  何が始まるのか、芽衣は始め、ピンと来なかった。そのうちに女性も服を脱ぎ始めた。ブラジャーを男性が丁寧に外すと、女性の顔に似合わず、豊かな乳房が画面に現れた。  見てはならないものを見ているとは自覚はしていたが、目を背けることはできなかった。  一時間くらい、男女の絡みを見ていた芽衣は、惚けた感覚に陥った。  きっと父親が借りたAVだろうと思った。小学生だった芽衣にもそれはわかる。母親は仕事が忙しく、父親とはすれ違いの生活。たまにいっしょになっても寝室は別々だった。だから、父親はまだ男盛りだけど、母親に身体を求めることはできない。持て余した性欲をぶちまけるには、ビデオしかなかった。
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