エピソード1

4/8
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
 だとしても、芽衣が高校生のとき、母親はまだ四十代と女盛りだから、不倫をしたとしても仕方がない。  そう思うのは、芽衣は母親を母親だと思ったことはなかったからだ。幼い頃に遊んでもらった記憶はなかったし、父親をことあるごとに馬鹿にしていたからだ。それに、芽衣は両親の本当の子どもではないことから、母親の母性を感じなかった。  あるとき、芽衣は駅前に無断で駐車してあった自転車を盗んだ。もちろん、窃盗罪であるが、芽衣は後で適当な場所に置いておけばいいと思った。  鍵がかかっていれば、自転車を諦めたものの、鍵が外れていることをいいことに、芽衣は自転車を拝借した。  後に芽衣は自転車を自宅から数メートル離れた場所に放置した。だが、自転車を漕いでいる姿を近所の人に見られていた。  後で自転車の持ち主が放置された自転車を発見し、持ち主に無事に返ったわけだが、勝手に自転車を乗った人間が芽衣だと、近所の人が密告したため、芽衣の元に警察官が訪ねてきた。  父親は何事かと、驚いた顔で対応に出た。保護者として父親は警察官に何度も謝り、初犯ということで警察官が見逃すことにした。警察官が帰ろうとしたら、帰宅した母親とバッタリ警察官に遭遇し、事情を聞いた母親は烈火のごとく怒り、突然、芽衣の顔を平手打ちにすると、髪を鷲掴みにし、引っ張り、表に放り投げた。  父親も警察官も唖然とした。止めなくてはならないのに、二人は母親の暴挙を止めようとはしなかった。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!