父、先手を打つ

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父、先手を打つ

真夜中の電話が数日続いていたが、気付けば静かな生活に戻っていた。 その静かさが私には不気味に感じていたが、ただただ父親が毎日電話の線を早々に抜いていたからだった。 母親が定時に帰社して、頑張って買い物と夕食と入浴を済ませても7時までには難しい。7時頃には電話の線が抜かれていたのだった。  私と父親の父子家庭と妹と母親の母子家庭がこれから続くと思っていた。 父親と暮らせば安定? そうだろうか? 父親は職人で月給制ではない。仕事してこそ収入になるが、仕事がなければ収入にならないし、天気にも左右される。 昔から、お金がないと繰り返す母親を見てきたのと、お金の管理が全て母親だったので、私は父親との生活に不安を感じながら生活をしていた。 そうしているうちに、学校から帰宅すると妹だけが帰宅していた。 母親の姿はなかったので、妹に確認した。 妹の話によると、アパートにいたら突然父親が迎えに来て、 「お母さん、死ぬんやって。帰らんか。」 と、そのまま帰ってきたそう…。 それも、また目が点になった。 もし、その一部始終を母親が聞いていたなら頭に血が上っただろう。 そう、冷めきった両親を見てきたから結婚なんかしないとその頃の私は強く思っていた。
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