63人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
家を出る決意
母方の叔母の窃盗事件から、父親は母親に酷い言葉を浴びせていた。
お前にも盗人の血が流れてると言われるようになってから、母親は当てつけのように近所のスーパーで万引きをするようになった。
そのスーパーでは近所の人も働いていたので、噂は近所でも広まっていただろう。
何よりも世間体を気にする父親にとっては、身内の恥どころではない。
叔母の事件に対し、母親は姉というだけの関係で、事件に全く関わっていない。だから、同じように盗人呼ばわりされることに納得できず苦しんだ。
そして、万引きをすることで父親を苦しめたのだ。
父親の怒りは、暴言だけで留まるはずがなかった。明らかに、事件以降は以前よりも手を上げるようになった。
父親が殴れば、母親の悲鳴が聞こえてくる、そんな痛々しい日々が増えていった。
ある日の夕方、私は帰宅し玄関を静かに開けた。その日は台所から母親の悲鳴が聞こえてきた。
バチンという音と「殺される!」という悲鳴が繰り返されていた。
きっと、お隣さんにも響いていたはず、突然の来客なら帰ってしまうに違いない。
そんなことを考えられる程、悲しいことに私はこの状況が日常になり、驚くこともなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!