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恋も仕事も順調です!?
それは仕事帰りのいつもと変わらぬ日常のこと。
帰宅途中の人達で混み合う電車に揺られ、最寄り駅についたら外は紺色の世界。
そこに浮かぶ明るい月を見て今日は、マシュマロみたいに白いなぁとか思った。
どんよりとした駅構内の少し生暖かい空気から外の心地よい外気にほっとする。
街中は決して自然が豊かではないが、すっとビルが立ち並び、手入れされた街頭は開放があって私はこの景色が好きだった。
「今日も仕事頑張った。私えらい」
月を見上げつつ自分を褒める。
そうすると仕事の疲労感がちょっとだけ、和らいだ気分になった。
こんなときはぱっと手早くテイクアウトのご飯を買いたくなるが、駅近くのスーパーでちょっと安くなったお惣菜や夕ご飯の調達をしようと思い、疲れた足に気合を入れてもうひと踏ん張りと、一歩。また一歩と、足を進めた。
──節約しなくちゃ。だって私、もう少ししたら結婚するしね!
ふふと、口元が緩む。
私の勤め先。橘百貨店内にあるケーキショップ「レトワール」でお客さんとして樹と出会ったのが3年前。
店頭で、樹にいきなりナンパされて初めは戸惑ってしまった。冗談かと思った。
だって、樹はガタイもよくコワモテ系の人。
でも熱心にお店に通ってくれて、私への気持ちは冗談じゃないからと。その都度ケーキを買ってくれた。
毎回、楽しそうに新作のケーキの味を私に伝えてくれているうちにだんだんとほだされた。
「その毎回のケーキ報告が、笑った顔が可愛いかったのよね」
ギャップ萌えとかいうやつだろうか。体格の良い樹が小さなケーキを美味しそうに口にちょこちょこと頬張るのがどこかハムスターめいてて可愛かったのだ。
そうして付き合いだした私達。
懐かしい思い出にまた、笑みがこぼれる
それから二人で沢山出掛けたし、それなりにケンカもした。
楽しい事も嬉しい事も一緒に、それこそミルクレープのように沢山の思い出を重ねてきて、結婚という甘い幸せなカタチを二人で築きあげた。
そして、これからも二人で色んな思い出を重ねて、樹と手を取り合って行くと。
──私は信じて疑わなかった。
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