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そうして、朝を迎えると莉子はポツポツと語った。
──裕福な家庭に生まれ。お嬢様と言われ。
どこへ行ってもあの間宮の家の子だと言われ窮屈だった。
その為にろくな恋愛が出来なかった。
いつ、どこで、誰が、見てるか分からなくて怖かった。いつも、上辺だけの付き合いで飽きちゃった。
実はショップカード渡したりしたの、これが初めてじゃないの。ごめんね。
でも、婚約者が居る人に渡したのは初めてだったの。
お互いに秘密を抱える者同士ならば外にバレることはない。
お父様が勝手に決めた結婚なんてもう知らない。
こんなに秘密が楽しいなんて初めて知った。
もっともっと早くこうしていれば良かった。
良い子にしてて、バカみたいだった。
だから私と一緒に堕ちよう。
私達はこういう運命なんだよ。
ね。二人なら大丈夫。
と、莉子はそう言った。
あまりにもあっけらかんと言われたので苦笑するしかなかった。
変に取り繕うよりかはよっぽどいい。
最後にはうっとりとした少女のような笑顔を向けられ、俺も運命だと思うしかなかった。
いや、もう逃げられないと思った。
そこからは麻希に出張だと偽り、同棲の話とかも有耶無耶にして莉子との逢瀬を重ねた。
つまらない麻希が莉子みたいになればいいのにと思い、戯れに莉子の職場のコスメを贈ってみたりした。
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