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寒々とした気持ちは体に伝播するのか。
気がついたら、つま先もいつの間にか冷えていた。
それでも、布団の中に入り込もうと言う気持ちにならず。その場に横たわったまま、まだ気持ちと考えを走らせたいと思った。
こんな風に自分に非があるとしっかりと思うのは、カラオケ店で話しを聞いてみてからのことだ。
天ヶ瀬さんは思った以上に、本郷樹の浮気の原因が自分にあるんじゃないかと自身を責めていた。
それでいて、僕に否定して欲しい様子もなく。
ただ、自分の至らなさに嘆く。
そんな様子の天ヶ瀬さんを見て、面と向かって会った事はないが車の中でセックスを楽しんでいた本郷樹に苛立ちを覚えた。
天ヶ瀬さんと本郷樹。
二人が過ごしてきた日々の機微がどういったものかは、知りようがない。双方の事を全て把握するのは無理だ。本郷樹にも言い分はあるかもしれないが。
婚約者を差し置いて、他の女とセックスをしてもいい理由が僕には思いつかない。
それが婚約者が居る者同士なら尚更だろう。
そう思い、感情的にならずにと食事を進めながら自制したつもりではあるが、僕なりの持論をつい、展開してしまった。
踏み込んだ事を言ってしまったかと内心は思っていたが、僕の話を全て聞き終えた天ヶ瀬さんは瞳に涙を滲ませて食事をすると笑った。
それは素直に魅力的な笑顔だと思った。
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