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誰だって悩んでいるよりかは元気よく笑って居るほうがいい。天ヶ瀬さんの笑顔を見てそう思った。
きっと生来は明るい性格なのだろう。
その後も食事をしながら雑談を交わしたが、天ヶ瀬さんは先程の話を引きずることはなく。ちょっと恥ずかしそうな表情をしながら。
『ステーキとライスを食べたい。でもでも、ダイエットだから我慢します』
と、ライスから視線を必死に逸らして食事をしていた。
「それに呪文みたく『サラダがライス。サラダがライス』とか、いいながら食べていたのは……ふふっ。面白かった」
天ヶ瀬さんが明るく食事をしていた様子を思い出して、自然と口元が綻んだ。
途中、なんだか自分ばっかり食べているのが申し訳なくなって食べるかな? と、思い。
ライスを勧めてみたりしたのだけど、最後までサラダがライスだと言い張っていた。
その後も、僕の素顔を見て値踏みをするような事はなくただ驚き。目を白黒させているのも、天ヶ瀬さんには申し訳ないが大変に面白かった。
自分の容姿なんか少しも興味はない。
今までは僕の容姿を見た女性は、セクシャルな意味合いを過分に含めたねっとりする視線を送られる事が多くて辟易した。
そう言った事もあり、いつの間にか普段は適当な服装や顔を隠すような髪型になっていた。
「天ヶ瀬さんは何ていうのかな。純粋に褒めてくれるのが分かった。あと、混乱具合が大袈裟で……」
妙な動きで壁に寄ったり。ドアにぶつかったり。
くるくると変わる表情も見ていて飽きなかったし。
「そう言えばあの時」
ふいに抱きとめたとき、天ヶ瀬さんから良い香りがした。
──女性が纏う香りで、良い香りだと思ったのはあの時が初めてだったし。
普通の女性から優しいとか言われたのも初めてで、ちょっと動揺した。
また口元が緩みそうになり、一人で何をやってんだと。
なんだか気恥ずかしくなって口元をそっと手で覆った。
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