15.種明かし

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「ふむ。島崎殿。この二人は長崎の海軍操練所で修行した凄腕の船乗りだ。勝海舟先生のもと咸臨丸でサンフランシスコに行ったあと、遣欧使節団の水夫も任されたのだ。拙者と共に、フランスに行ってなあ。そうそう、途中スヒンクスという獅子のような形をした建造物の前でポトガラを撮ったりして」  さくらの開いた口はふさがらなかった。勝海舟? 咸臨丸? 遣欧使節団? 予想外の単語の連続に、ついていけなかった。善吉と弥平を見やると、二人とも照れ臭そうに俯いていた。 「先生、そんな言い方は持ち上げすぎですよ」 「事実を言ったまでだろう。とにかくそういうわけでな。この二人はそんじょそこらの水夫にはあらず」 「も、申し訳ありませんでした。そのような方々とはつゆ知らず、とんだ無礼をお許しください。お二人なら八丈に行くなど朝飯前ですよね。私は無事に島に行けないかもしれないならいっそ逃げませんかというようなつもりで、浅はかな提案を……」  さくらは善吉と弥平を交互に見、頭を下げた。 「いいんだって。別に俺たちゃ名字もないんだし」 「まさに乗りかかった船ですよ。こうして関口先生にも再会できたし」
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