15.種明かし

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「なあに、この辺りには誰かしら知り合いがいるからよ。なんとかなるだろ。とにかく行くぞ。あんたは野盗に襲われて身ぐるみ剝がされたところを俺たちに助けられたってことにしておけ」  横浜は、さくらにとって初めての土地。今はつべこべ言わず、信じてついていくのがよいだろう。わかりました、とさくらは頷いた。  三人は、丘を降りて街中に入った。人通りの多い目抜き通りを足早に進んでいく。善吉曰く、裏道をちまちま行くより、近道をサッサと行った方がいいだろ、というわけで。今日で何度目になるのかわからぬ「本当に大丈夫だろうか」という不安を飲み込み、さくらは黙って歩いた。  状況が許すなら、ゆっくり街を見て歩きたかった。先ほど丘の上から見た珍しい建物は、目の前で見るとより興味をそそる。中はどんな風になっているのだろう。だがもちろん、入って見る余裕はない。
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