15.種明かし

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 さくらにとって物珍しいのは街並みだけではない。すれ違うのは、本物の異人。自分たちと見目形が違うのだと話には聞いていたが、初めて見た彼らの姿は新鮮な驚きをもってさくらの目に飛び込んできた。異様に背が高い者、恰幅のよい者。鼻は高く、目の色が青色、灰色、茶色など様々だ。髪の色も、薄い茶色や金色など。だがそこまで恐怖心を抱かせるようなものでもなく、なるほど異人も人間なのだと、先ほど善吉が言っていたことが腑に落ちるような気がした。  いろんな格好の人々が行き交っているとはいえ、さくら達三人はやはり目立つようだ。怪訝な目で見られていることに、気づかないわけにはいかなかった。そしてとうとう 「そこの者ら」  と、役人風の侍に声をかけられた。新政府軍の者が着ているあの黒い装束ではなく、普通の和服。奉行所か何かの人間だとすれば完全な敵ではないだろうが、関わらずに済むならそれに越したことはないだろう。こんなところで「島崎朔太郎の脱走」が知られれば、まだ間に合うからと流人船に乗せられるのが関の山だ。最悪、この場で斬り捨てられるかもしれない。
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