15.種明かし

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 聞こえなかったふりをして進もうかとさくらが考えたのをよそに、弥平が侍の声掛けに返事をした。 「はあ、我々のことですか」 「見ない顔だな。どこへ行く」 「少々……知人のところへ」 「そこの……女子? は何だ。奇妙な格好で」 「ああ、ちょいと酷い目に合ったようでして」  さくらは小さくうなずくと、顔を見られないように俯きがちに弥平の背に隠れた。 「酷い目とは? 野盗か? どんな奴らだ」 「覚えてねえみたいでしてね、まあ、とにかく、お構いなく」 「そういうわけにはいかない。近ごろ野盗や破落戸の類には手を焼いているのだ」  面倒な者に捕まってしまった。こんなところで無駄な正義感を出されてもありがた迷惑である。さくらは顔をしかめた。走って振り切るか。だが失敗すればもっと面倒なことになるのは明らかだ。万事休すかと思われたその時。 「お前、善吉か?」  侍の背後から来た男に声をかけられた。驚きと嬉しさが入り混じったような顔をしてさくら達を見ている。 「おお、やはりそうだ! 弥平もいるではないか! 二人ともこんなところで何してる」 「せ、関口先生!」
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